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2007年6月

Openness & Accountability

 The International Center for Media and the Public Agenda が、

Openness & Accountability: A Study of Transparency in Global Media Outlets

 と題するレポートを公表した。中々よく調べている。

http://www.icmpa.umd.edu/pages/studies/transparency/main.html

New Headquarters

 ニューヨークタイムズ社の新社屋へのお引越し。

 新社屋のロケーションは8番街の40丁目と41丁目の間で、ポートオソリティーの斜め向かいである。タイムズスクエア周辺のエリア内でのお引越しであり、新社屋は流麗なインテリジェントビルである。

 これまで、ペーパー版の編集局とデジタル部門のオフィスは5ブロックほどの距離を置いて、デジタル部門はペーパー版の編集局とは異なる発想で新たなジャーナリズムのあり方を模索してきた。だが、両者が対立する時期は既に過ぎ、この新社屋でもって両者は正式に合体する。

 「ニューヨークタイムズ」といえども、デジタルの時代に生き残ることができるかどうかは分からない。少なくとも、同紙がこれから大きく変貌していくのは間違いない。

 幾多の試練に直面しつつも、私は「ニューヨークタイムズ」が21世紀も優れたジャーナリズムの世界を切り開いていくものと期待している。

Christine Ebersole

  前項でふれた大人の女性の魅力だが、ハリウッドでは40歳を過ぎた女優には良い役が中々つかないという。

 ブロードウェイのほうが、年齢による女優に対する差別は少ない。今年のトニー賞でミュージカル主演女優賞を受賞した Christine Ebersole は、授賞式で下記のようにスピーチしている。ほろっとくるスピーチである。

http://www.tonyawards.com/en_US/tonynight/speeches/2007-06-11/200706111181542383156.html

The Closer

 ケーブルテレビのチャンネルが増えたことにより、日本で見ることのできるアメリカのテレビ番組は、近年増加傾向にある。また、DVDのリージョンが日米で異なるという問題があるとはいえ、アメリカのテレビ番組のDVD化も増えている。でも、一般的にはアメリカのテレビが日本で話題になることは減っているように思う。

 例えば、日本では Lala TV で放送されている刑事ドラマ The Closerは名調子の傑作ドラマなのだが、日本ではあまり知られていないのではないかと思う。 

  Lala TVの番組ホームページはこちら:

 http://lala.tv/programs/closer/index.html

 アメリカでは TNT という放送局で放送されており、こちらの番組ホームページはこちら:

 http://www.tnt.tv/series/closer/

 主演の Kyra Sedgwick は実に素晴らしい。大人の女性の魅力がこの人にはある。

Tony Awards

 前項の「コーラス・ライン」でリバイバル・ミュージカル作品賞が・・・というのは、トニー賞のことを指す。

 最近のトニー賞のサイトは動画も増え、なかなかの充実ぶりだ。

http://www.tonyawards.com/en_US/index.html

 心をひかれた作品がでてきたら、ぜひNYへ。生で見ないことにはブロードウェイの素晴らしさは分からない。

A Chorus Line

 リバイバル・ミュージカル作品賞は逃したものの、興行成績は順調な「コーラス・ライン」。

 誤解している方が少なくないので記しておくと、実際のオーディションではこの作品のように私生活をこと細かく語らせるわけではない。

 ダンサーの一生についての聞き取りプロジェクトが発展してミュージカルになったため、この作品はダンサーの生き様について赤裸々に語る作品になったものである。

 「コーラス・ライン」に関する本は、邦訳のあるものだと下記がある。この本は単純な成功物語ではなく、苦味のある本になっている。ショービジネスに関心のある方にはこの本は非常に興味深い書物である。

 http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4%E7%89%A9%E8%AA%9E%E2%80%95%E3%80%8E%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%80%8F%E3%81%AE%E8%88%9E%E5%8F%B0%E8%A3%8F-%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88-%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%AC%E3%82%B9/dp/4062065495/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1182098532&sr=1-1

E!

 芸能情報番組中心のケーブルチャンネル E!。

 比較的マイナーなチャンネルで、NYのホテルでもこのチャンネルを見ることができるホテルが少ないのは残念。

 THS と最近は略称されている True Hollywood Story は、もともと役者の伝記を読むのが好きな私が好んで見る番組である。

 この局のホームページはこちら:

http://www.eonline.com/index.jsp

RENT

 ブロードウェイ・ミュージカル RENT の興行成績がこのところずっと悪い。満席率が損益分岐点の目安とされる7割に到達しない週が多くなっている。

 ブロードウェイで RENT を見たい方は、今のうちにNYに足を運ばれたほうがよいだろう。

David Halberstam (Part Ⅱ)

 「ニューヨークオブザーバー」が、デイビッド・ハルバースタムを偲ぶ友人のことばを記事にまとめている。私はゲイ・タリーズのくだりを特に興味深く読んだ。

http://www.observer.com/2007/last-hosannas-halberstam

Kenji Kitatani

 北谷賢司氏の新刊『ライブ・エンタテインメント新世紀』(ぴあ総研)。近年の興行ビジネスのメカニズムの変貌を描き出す。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80-%E5%8C%97%E8%B0%B7-%E8%B3%A2%E5%8F%B8/dp/4835616685/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1181737043&sr=1-1

 興行ビジネスに関心のある方には必読の書。著者はワシントン州立大学コミュニケーション学部教授のかたわら、興行ビジネスにも数多く携わってきた斯界のプロ。

Chinese Characters

 『朝日新聞の用語の手びき』の初版を、私はかれこれ25年以上使っている。新しい版を買い求めてもよいのだが、掌におさまる大きさが好きで今でも初版を使っている。

 この手びきで重宝するのは同音異字の漢字の使い分けである。「替える」と「換える」など、何度この手びきを参考にしたことか数えきれない。

 一つ疑問なのは、国語辞典がこのような同音異字の漢字の使い分けについての情報を提供するのに消極的なことである。一通りの説明はあっても、この朝日の手びきのように豊富な用例を提供している国語辞典を私は寡聞にして知らない。

 ただ単に私が本当に寡聞なだけかもしれないので、この種の情報が豊富な国語辞典があるのなら、お教えいただけると幸いである。

 

Opposing Viewpoints

 Opposing Viewpoints というシリーズがある。

 論争性の高いテーマの様々な論点について、賛成派と反対派の双方の文章をピックアップして掲載したリーダーである。巻末には文献案内を掲載している。Greenhaven Press という出版社の刊行。

 最近はご無沙汰しているが、私はこのシリーズを読み漁っていた時期がある。賛成派の議論をその通りだと思って読んでも、反対派の議論を読むと賛成派の言うばかりではないと気づかされる。読み進むにつれ、頭が耕されてくるシリーズである。

 このシリーズが日本でどの程度知られているかは分からないが、ゼミで討論したいときの教材にもってこいである。

Center for Arts & Culture

 アメリカにおける文化政策の最新動向をフォローしたいときは、Center For Arts & Culture が発行しているリストサーブに下記から登録すると便利。毎週、無料でメールが送られてくる。

http://www.culturalpolicy.org/issuepages/listserv.cfm

The Politics of Culture

 文化政策の入門書を日本語で一通り読み終え、本式に英語文献を読み始めたいとき、The Politics  of Culture: Policy Perspectives for Indivisduals, Institutions, and Communities はお勧め。これまでの主要な議論を一望できる便利な一冊である。

http://www.amazon.co.jp/Politics-Culture-Perspectives-Individuals-Institutions/dp/1565845722/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=english-books&qid=1181321615&sr=1-1

Bags

 古山浩一著『鞄が欲しい』は、万年筆画家にして無類の鞄好きの古山氏が、絵画と文章で50の鞄について取り上げた書物である。

 あとがきに古山氏が書かれている通り、本書はカタログではなく、使用者の立場に立って、丈夫でかつ使い込むほどに味が出てくる鞄とはどんな鞄だろうかと探求したものである。昔のコーチの鞄の革の良さを語り、日本ではなぜか人気が出ないグルカの鞄をしっかり取り上げ、プラダのナイロンバッグの安っぽさを指摘する。愛情豊かに本音で語る鞄論を展開している。後半は日本製の鞄を取り上げている。アマゾンではこちら:

http://www.amazon.co.jp/%E9%9E%84%E3%81%8C%E6%AC%B2%E3%81%97%E3%81%84%E2%80%95%E4%B8%87%E5%B9%B4%E7%AD%86%E7%94%BB%E5%AE%B6%E3%81%8C%E6%8F%8F%E3%81%84%E3%81%9F50%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E9%81%8D%E6%AD%B4-%E5%8F%A4%E5%B1%B1-%E6%B5%A9%E4%B8%80/dp/4777904202/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1181317032&sr=1-1

 私が特に共感したのは、古山氏が取っ手のついたショルダーバッグを好まれていることである。ジャケットを痛めないためには、取っ手を持てる時は取っ手を持ち、どうしようもないときだけ肩に鞄をかけるに越したことはないのだが、取っ手のついたショルダーバッグは意外と少ない。

The Paley Center for Media

 ニューヨークとロサンゼルスに、テレビとラジオの博物館がある。

 ロサンゼルスの分館に出かけたことはないが、ニューヨークの本館には私はちょくちょく出かける。その昔、Seinfeld がDVDになるずっと前のこと、同館所蔵の Seinfeld 見たさに足しげく通っていた時期もある。

 ニューヨークの本館は、5番街と6番街の間の52丁目の25番地にある。所蔵テレビ番組を検索して見たり、催し物があったり、ミュージアムショップもあったりと、テレビ好きにはとても楽しい場所である。

 この博物館、ネットの時代に対応して、先ごろ The Paley Center for Media に名称を変更した。ペイリーとは、このセンターの創設者にしてCBSの創設者の故ウィリアム・S・ペイリーからその名を取ったものである。

 アメリカのテレビ好きの方は、このセンターを訪ねられることをお勧めしたい。

The Editors Weblog

 既に Bill Keller の項でもご紹介したが、The World Editors Forum による The Editors Weblog は、世界の新聞界の動きをフォローするのに最適である。

http://www.editorsweblog.org/

 質量ともに非常に豊かなので、ちょっとチェックを怠ると読みきれないほどの分量が更新されている。

 このブログをフォローしていくのは大変だが、それだけの価値はある。私はマラソンと思って、このブログを読み続けている。

Network

 1976年公開の映画 Network。

 テレビ・ジャーナリズムのエンタテインメント化について考える上で、この映画は傑作である。

 視聴率低下で番組を降ろされることになったアンカーのハワード・ビールが放送中に自殺予告をする。これがきっかけとなり、彼は預言者に祭りたてられ、どんどん狂気の方向に進んでいく。

 ビールの決め台詞"I'm mad as hell and I'm not gonna take it anymore!"は、70年代半ばのアメリカの空気をよくつかんでいる。

 私は、ニュースはおかたくないニュース番組は認められないという立場には立っていない。公共放送なら、少数の人しか見ないが価値のある番組を放送することができる。だが、PBS の The NewsHour with Jim Lehrer や Charlie Rose をたくさんの人が見る日が来ることはないであろう

 民放では、6月4日の Don Hewitt の項で取り上げたヒューイットの主張、すなわちシリアスなジャーナリズムとショービジネスの境目を歩いたときに優れたジャーナリズムが生まれるという考え方が、私の共感するところである。

 これはショービジネスの側でも同じことが言える。

 『広告に携わる人の総合講座(平成18年版)』(日本経済新聞社)でも述べたことだが、ブロードウェイの面白さの一つは、社会問題をエンタテインメントとして見せるうまさである。たとえば、Movin' Out はベトナム戦争をテーマとした作品だが、お説教くさい作品でも暗いだけの作品でもなく、劇場を後にするときはしっかり生きていこうという気持ちにさせられる優れた作品である。

 Network から話が広がったが、最後にもう一言書いておくと、日本のテレビは政治を風刺するコメディがアメリカと比べて乏しい。レイトショーのモノローグや The Daily Show with Jon Stewart のような番組は日本では難しいのだろうか。

Jessica Savitch

 最近、ジェシカ・サヴィッチの映像を見た。

 この人については Gwenda Blair著の Almost Golden: Jessica Savitch and the Selling of Television News を読んでいたが、映像を見る機会にはめぐまれていなかった。

 同書によると、この人はジャーナリストとしての能力はなかったが、テレビに出たいがためにジャーナリストになった人である。

   まともな番組は任せられないが、容姿はよいという理由で NBC は彼女に1分間のニュースダイジェスト番組をやらせていた。大変な人気があったそうだ。

 しかし、生放送で薬物を使用しているかと思われる話し方をして番組をおろされ、その後は痛ましい事故で亡くなっている。

 この本を読む限りでは、この人は注目を浴びたいという野心だけは人一倍あるものの、内容がともなわなかった。中身はなくても外見だけで人気者になるという、テレビ・ジャーナリズムのエンタテインメント化の問題点を凝縮したような人物である。

 映像を見てみると、優しそうな感じの方で、同書に記述されているような事情を推し量るのは難しい。不出来であったという彼女のワシントン・レポートなども見てみたいものである。

2007 Tony Awards

 ブロードウェイの1年間の総決算であるトニー賞の授賞式が10日に行われた。

   最優秀ミュージカル作品賞は Spring Awakening。性の抑圧の強い19世紀のドイツを舞台に性の目覚めを描いた作品。音楽はロック調。

 作品のクオリティという点では私は Grey Gardens の方が優れていると思うが、Christine Ebersole が最優秀ミュージカル女優賞を取ったので、 まあよしとしよう。

Bill Keller

 「ニューヨークタイムズ」のビル・ケラー編集主幹へのインタビューが、ポッドキャストで The Editors Weblog における Analysis セクションの6月2日の項にアップされている。

 The Editors Weblog のアドレスは下記の通り:

http://www.editorsweblog.org/

CBS

 CBSのサイトで動画を見ようとすると、大学の研究室では問題ないのだが、自宅ではしょっちゅうバッファリングになってしまい、まともに見ることが出来ない。拙宅の環境は8MのOCNである。

 どなたかこの辺の事情についてご存知の方がいらっしゃったら、お教えいただけたら幸いである。

The New York Review of Books

 The New York Review of Books についても一言ふれておこう。

 この雑誌はその名の通り書評誌で、1冊の書物を数ページかけてじっくり書評する。ホームページはこちら:

http://www.nybooks.com/index

 すこぶるハイブラウな書評誌である。

 何かの記事で読んで知ったことだが、同誌は十分な儲けを出してきたのだそうだ。こんなに高級な雑誌で儲けを出せるとは素晴らしい。日本にもこうした書評誌ができるとよいのだが。

Russell Baker

 ニュースの本質にレトリック巧みに切り込むコラムは、新聞を読む醍醐味の一つである。

 一時期までは、アメリカの新聞・雑誌コラムはよく翻訳が出ていたが、最近はすっかり少なくなってしまった。東京書籍の「アメリカ・コラムニスト全集」のような企画は、日本の出版界の現状では難しいようだ。ちなみに、コラムニスト全集のラインアップはこちら:

http://homepage1.nifty.com/ta/sf01/tokyo.htm

 時々、飛行機で退屈したときなど、私は名コラムニストトップ10のリストを作ることがある。不動の第一位はラッセル・ベーカー。「ニューヨークタイムズ」でObserver という名コラムを書いていたコラムニストである。今でも、The New York Review of Books で健筆をふるっている。

 彼のコラムは、正論を高らかに述べるのではなく、悲喜こもごもをかみしめた苦味のあるコラムである。初期のコラムは結構陽気なのだが、年々いぶし銀の魅力を放つようになっていった。現在の「ニューヨークタイムズ」のコラムニストも才気煥発で素晴らしいのだが、ラッセル・ベイカーのような熟成したコニャックのようなコラムニストがいないのは物足りないものがある。

 ベイカーのコラムを日本語で読むなら、絶版だが『怒る楽しみ』(河出書房新社)をアマゾンで古本で入手することができる。この項を執筆時は1円になっている。

http://www.amazon.co.jp/%E6%80%92%E3%82%8B%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%BF%E2%80%95%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A046-%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB-%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%83%BC/dp/4309201121/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1180547599&sr=1-1

Junro Fukashiro

 この4月からのようだが、『朝日新聞』の「天声人語」が2人が交代で執筆する方式に変わったそうである。

 それでも、週に3-4本の執筆であり、私にはきつい仕事量に思える。クオリティを保つためには、週に2本程度の執筆にすべきではないかと思う。

 アメリカの新聞コラムは、週に2-3本の執筆というケースが多い。「ニュ-ヨークタイムズ」もフランク・リッチが週1回なのを除いて、残りの7人は週2回のペースである。もっとも、1回のコラムが週2回ペースの場合700-800語(「字」ではない)と日本と比べて長い。

 「天声人語」はあまりに駄作なので読まなくなってしまったが、深代惇郎氏の「天声人語」は天下一品だった。「盗聴テープ」とその翌日のコラムなど、コラムの白眉である。アマゾンで見ると、氏の著作がすべて絶版になっているのは残念なことである。

Shimpei Tokiwa

 私がニューヨーク好きになったのにはいろいろな要因があるが、一番大きな影響を受けたのは常盤新平氏である。氏の翻訳書・著書は、『ニューヨーカー短編集』(早川書房)『アメリカン・マガジンの世紀』(筑摩書房)などをはじめとして、手当たり次第に読んできた。

 私が文章を書いていて「ソフィスティケイティッドな」ということばを用いる時は最高級の褒め言葉として用いているのだが、これは常盤氏から影響を受けたものである。

PFI

 優れた論文を一つご紹介したい。

 太下義之氏の「PFIにおける『需要リスク移転のパラドックス』を巡る考察」である。『季刊 政策・経営研究』第2号に掲載されているもので、副題は「PFIの失敗事例に学ぶ、PPP成功のポイント」となっている。

 本文はこちらから: 

http://www.murc.jp/report/quarterly/index.html

 これからはこれが流行る!、これを知らない人間は遅れている!とまくしたてるのも結構だが、この論文のように失敗事例を分析して教訓を得ようというのは大変知的な作業であり、この論文から学ぶべき点は多い。

 なお、ディスクロージャーをしておくと、太下氏は私が非常にお世話になっている優れた研究者である。

Don Hewitt

 この Christmas Spectacular スペシャルをプロデュースするドン・ヒューイットは、アメリカのテレビジャーナリズムにおける伝説上の人物である。

 エド・マローの最初のテレビ出演に登場し、大統領候補のテレビ討論をケネディ・ニクソン選で初めて実現し、そして 60 Miniutes というアメリカのテレビで最も視聴率を稼いだ長寿番組を生み出したのは、全てドン・ヒューイットである。

 テレビ・ジャーナリズムにショー・ビジネスを持ち込んだところにヒューイットの成功の秘訣があるが、彼はただ単にエンタテインメント路線を追求したのではない。

 Tell Me a Story という回顧録をヒューイットが出版したとき、私はトーク&サイン会でヒューイットの話を聞いたことがある。サインもしていただいた。そこでも彼は、シリアスなジャーナリズムとショービジネスの境目を歩いたときに、優れたジャーナリズムが生まれると強調していた。儲かる報道番組というパンドラの箱を開けてしまった彼は、テレビの報道が軟派になりすぎているのに警鐘を鳴らしていた。

 その回顧録は、既にペーパー版も出ている:

http://www.amazon.co.jp/Tell-Me-Story-Minutes-Television/dp/158648141X/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=english-books&qid=1180311778&sr=1-1

 60 Minutes は近年視聴率が落ち、ヒューイットは引退をさせられてしまった(後進に道を譲るべき年齢であったのは確かだが)。最近の 60 Minutes についての私の評価は既に下記に記した通りだが、視聴率は回復傾向にあり、クオリティの面でも盛り返してきているところもある。  

http://timessquare.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/60_minutes.html

Radio City Christmas Spectacular

 クリスマス・シーズンのニューヨークのお楽しみの一つ、Radio City Christmas Spectacular。専属ダンス団 Radio City Rockettes (ホームページはhttp://www.radiocity.com/rc_rockette_index.htmlでお馴染みの、毎年11-12月に上演される期間限定のショーである。

 私はこのショーが大好きで毎年見る。ニューヨークの友人には「今年も?」とあきれられるが、このショーを見ないと私は年を越せない。

 ロケッツのきれいにそろったダンス、サンタさんのロックンロール、ロックフェラーセンターでのスケートのシーンなど、1時間強の時間にクリスマスのお楽しみをたっぷり盛り込んだショーを見て、その足でロックフェラーセンターのクリスマス・ツリーとサックス・フィフス・アベニューのショーウィンドウを見に行くのが、私の年末恒例の行事である。

 今年はこのショーは75周年を迎え、60 Minutes を生み出したドン・ヒューイットのプロデュースで、NBCで特番が放送されるとの発表が先ごろあった。Playbill のオンライン版の記事はこちら:http://www.playbill.com/news/article/108279.html

 番組のホストを務めるのは、Today のマット・ラウアーとメレディス・ビエラ。昨年、ビエラはロケッツとともに足を振り上げる姿を Today で披露している。

 ショーのチケットはこちらから。チケットは既に購入可能。

http://www.radiocity.com/eventcalendar/home

Kodansha America, Inc.

 浅川港著『NYブックピープル物語-ベストセラーたちと私の4000日』(NTT出版)。

 とても面白い。アマゾンではこちらから:

http://www.amazon.co.jp/NY%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AB%E7%89%A9%E8%AA%9E%E2%80%95%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%A8%E7%A7%81%E3%81%AE4000%E6%97%A5-%E6%B5%85%E5%B7%9D-%E6%B8%AF/dp/4757141572/ref=sr_1_1/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1179910977&sr=1-1

 講談社アメリカで英文書籍の出版に携わり、黒人のディレイニー姉妹の回顧録など全米ベストセラーを生み出すことにも成功した浅川氏の、氏自身の回顧録である。

 日本のメディア企業が海外進出を成功させるための条件を学ぶことができる本であり、日米の出版ビジネスの相違点について学ぶことができる本でもある。

 ニューヨークのメディアを専門にする者として、私はいずれは出版ビジネスの研究にも本式に取り組むつもりだが、取材を通じてこれだけの情報と見識を学ぼうとしたら、アポ取りといい取材先までの移動といい大変な手間がかかる。そう思うと、本の値段は安い。

 日本のメディア企業の多くは、日本のマーケットが大きいこともあり、海外進出には消極的である。ニューヨークに進出した企業も事業を縮小したり、撤退しているケースが多い。

 私の知る範囲内でも、せっかくニューヨークにニューヨークのメディアビジネスのからくりを熟知した逸材がいても、その社員の能力を東京の幹部が理解できず、その逸材に腕をふるわせないことがある。あるいはまた、ニューヨークで貴重な経験を積んで日本に戻ったのに、その経験を伝えようとしても関心をもってもらえずに独り孤独をかみしめている人もいる。

 日本のメディア企業の多くがどんどん内向きになってきているのを、私は危惧している。アメリカが好きだろうが嫌いだろうが、日本の主張を世界に伝えていくためには、ニューヨークに根をはり、ニューヨークのメディア産業がどのように国際社会の潮流を生み出しているかを理解し、そして自らも英語で情報を発信していく必要がある。

 なお、本書133ページに「20/20」がCBSの番組とあるが、これはABCの誤りである。

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