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2007年5月

Warmth

 テレビ局のニュース部門のカラーについて書いてみたい。どの局でも画面の裏側では様々な人間ドラマがあるが、ここではあくまで画面上で視聴者にあたえるイメージについて考えてみようということである。

 ABC、CBS、NBCに話題を限定すると、画面上で一番わきあいあいとした雰囲気を出しているのはNBCで、特に Today はそれが売りになっている。逆にそれがなまぬるい印象をあたえている部分もある。メレディス・ヴィエラをケイティ・カーリックの後釜にすえたのは、これ以外は考えられないともいえる優れた人選だが、私はアン・カーリーを昇格させてあげてほしかったとも思う。

 CBSは、ケイティ・カーリックがアンカーになったが大苦戦中であり、局を代表するキャラクターには今のところはなりえていない。やはり、CBSといえば60 Minutesであり、 年々ソフトになっているとはいえ、マイク・ウォレスが隠しカメラの映像をつきつける、エド・ブラッドリーが刑務所でインタビュー、ダン・ラザーがアフガニスタンを行くなどを多くの視聴者が覚えており、硬派なイメージがまだ強いかもしれない。ちなみに、カーリックはおしゃべりをしないと魅力が出ない人なのだなというのが、最近の私の印象。

 ABCは寒々とした印象をあたえる。ルーン・アーリッジの負の遺産だろう。バーバラ・ウォルターズとダイアン・ソイヤーの不仲は最近はどうなっているか知らないがよく知られた話だし、テッド・コペル後の Nightline は内容もなく冷え冷えとした印象をあたえる。また、Good Morning America が Today に勝てないのは、やはりみんながダイアン・ソイヤーにおびえているような印象をあたえるからである。チャールズ・ギブソンはあたたかなキャラクターで私は好きだが。

 以上は全国ニュースの話である。ニューヨーク・ローカルになると話は違ってきて、ABCのニューヨーク・ローカルもみんな仲が良さそうという印象を私は感じる。一番あたたかな印象をあたえるニューヨーク・ローカルのアンカーはCBSのデイナ・タイラーで、日本で言うと八木亜希子さんに近い。

The Future of the Newspaper Industry

 ここ数年、私は新聞社の生き残り戦略(特にデジタル戦略)についての講演や原稿の執筆の仕事が多い。

 いろいろなテーマを扱ってきたが、最近は特に下記の2つのポイントを力説するようになっている。

1.経営戦略

 幹部がビジョンを語り、社員をひっぱっていくことができるか。

 分かりやすく簡潔なことばで、わが社はこれからこういう方向に動いていこうと語ることができ、社員をわくわくさせることができるか。

2.スタイル

 他のメディアと差別化できる際立ったスタイルを持てるかどうか。

  「ニューヨークタイムズ」や「ニューヨーカー」のような洗練されたスタイルは、日本の新聞に欠落している。

  美術のセンス(紙面やサイトの美しさ)と文学のセンス(記者・編集者が深い人間性をもっているか)は、新聞のブランド力を強化するのに不可欠である。

 新聞社と広告会社の新聞局の改革意欲の乏しさには、がっかりさせられることも多い。だが、現実から逃げても問題の解決にはならないので、新聞業についての仕事はこれからも続けていくつもりである。

Anna Wintour

 ニューヨークのファッション界で最も影響力のある人物とも言われる Vogue の Anna Wintour 編集長。「プラダを着た悪魔」のミランダ・プリーストリーのモデルになったのは広く知られたところである。

 映画版を見る限りでは悪魔という印象を私は全く受けないが、原作は恨みつらみがこもっていて、悪魔というのもうなずける部分がある。

 ウィミンズ・ファッションに詳しくない私は、この敏腕編集長に取材する機会に恵まれることはなさそうである。私に彼女のすごさの片鱗を理解できるのは、ブルックス・ブラザーズとトム・ブラウンを結びつけたのは彼女だという話くらいしかない。

 ただ、期間限定なら、このような強力なパワーの持ち主のもとで仕事をするのは、私は嫌いではない。彼女の何がパワーの源なのか、じっくり観察する絶好のチャンスだからだ。

Adweek

 アメリカを代表する広告業界誌といえば、Advertising Age Adweek である。どちらも週刊誌。両誌ともに批判精神があり、広告ジャーナリズムが機能しているのを感じる。全く機能していない日本とは大違いだ。

 今日ご紹介したいのは、Adweek がおしまいのページに掲げている David t. Jones による広告業界を風刺する漫画である。

 例えば4月30日号では、1こまめではクライアントがバイラルアドを作るべきだと述べている。だが、2こまめではクライアントの本音が記されている。  

 「バイラルはただだし、ただはいいことだ」

 「ミーティングでバイラルって言ったぞ。これで俺はクールだ」

 「テレビで使えるほどではない素材を使うことができるぞ」

 といった按配。

 アメリカの漫画らしく文字が多すぎるときもあるが、この漫画は健全な懐疑精神を発揮しており一見に値する。

Broadway vs. West End

 ブロードウェイとロンドンのウェストエンドを比較すると、両者それぞれに長所がある。

 ウェストエンドがブロードウェイより勝っていると思われるのは: 

1 劇場が立派。

2 プレイを演じる役者の台詞回しのうまさ。

 ブロードウェイがウェストエンドより勝っていると思われるのは:

1 ミュージカルが華やか。

2 洗練されたセンス。

3 無料プログラム「プレイビル」の配布。

4 歩いて回れる範囲に劇場が固まっていること。

 まだまだあるが、それは執筆中の本に記す予定である。

 ちなみに、はじめてロンドンに出かけたとき、幕間の客席で水も飲まずにアイスクリームをおいしそうに食べている観客には驚いた記憶がある。

Jumps

 アメリカの新聞や雑誌で是非やめてほしい悪癖が一つある。

 それは、記事が他のページにジャンプすることである。特に、2回もジャンプされると、どこまで記事を読んだか分からなくなってくることがある。切り抜きするのにも面倒だ。

 マックス・フランケルは、「ニューヨークタイムズ」の編集主幹だったとき、サルズバーガー・シニア発行人にジャンプをやめるべきだと提言したが受け入れられなかったとコラムに書いたことがある。ビル・ケラー現編集主幹もジャンプは嫌いだと発言している。

 ジャンプはアメリカ新聞雑誌界のよき伝統とはいえず、読者のためを思って廃止すべきであろう。

Law & Order

 NBCが長寿ドラマの Law & Order の放送を続行すると発表した。視聴率の落ち込みから一時はケーブルテレビでの放送に移行するかとも思われたが、結局、NBCで放送が継続されることになった。

 アメリカの人気テレビ番組で日本であまり受け入れられない番組はいろいろあるが、この番組もその一つ。

 番組前半は捜査、後半は法廷シーンというドラマで、1分1分非常に密度が濃い。社会問題を貪欲にストーリーに取り込みつつ、このドラマはスピーディーにそして渋く展開する特に、第3シーズン以降に登場する、今は亡きジェリー・オーバック演じるブリスコ刑事は絶品である。

 ちなみに、日本で発売された字幕つきシーズン1のコンプリートDVDボックスはアマゾンではこちらから:

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%83%BC-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC-%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%B31-%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88DVD-BOX/dp/B00024Z4T6/ref=pd_rhf_p_1/249-3142245-6379561

 このページで、レビュアーの千代田形氏は、オーバックを「アメリカの藤田まこと」と述べられているが、ブリスコ刑事は安浦刑事とは違うと思う。では、山さんかと言われるとそれも違う。ブリスコ刑事は中々の毒舌家で、日本の刑事ドラマでよく似た刑事はちょっと思いつかない。

 Law & Order は新シーズンで18シーズン目を迎える。まだまだこのドラマはキャンセルするのはもったいない番組である。

8 C's

 大前研一氏の3つのCに刺激されて、私は新聞社の生き残り戦略を立案する上で重要な4つのCで始まるチェックポイントを考えて「日経広告手帖」2006年9月号に原稿を書いたことがある。記事はこちらからEBookでどうぞ:http://www.nikkei-ad.com/techo/top_2006.html

 最近は、新聞社の方々に講演するときはさらに4つ増やして8つのCとしてお話するようにしている。だが、8つというのは数が多すぎて、記憶に残していただくには3つか4つが限界だなと反省してもいる。

 その8つをここにも記しておくと下記の通り。「日経広告手帖」に記さなかった項目には簡単に説明をつけた:

1 Control

 ---上場を続けるのか非上場化するのか決断すべき時がきた

    (これはアメリカの話)

2 Customization

3 Compactness

4 The Continuous Newsroom

  ---24時間休みなくニュースを出稿できる体制づくりを

5 Combination

  ---文字と写真だけでなく、音声や映像も組み合わせての報道を

6 CGM

7 Correctness

   ---広告効果を正確に広告主に説明できるようにせよ

8 Creativity

Entertainment Tonight

 日本の主婦向けワイドショーは、芸能ニュース、社会部ネタ、ファッションチェックなど、幕の内弁当のように様々な話題を扱うが、これにぴったり一致するアメリカのテレビ番組はない。芸能ニュース番組は基本的に社会部ネタを扱わない。また、ケーブルチャンネルの E ! は様々な時間帯に芸能ニュース番組を放送するが、メジャーネットワークでは夜7時台に放送されている。

 アメリカの芸能ニュース番組は、一般にセットはド派手で、音楽も派手で、ホストが美男美女というケースが多い。そして、日本のワイドショーと違ってしめっぽくない。

 例えば、一世を風靡した芸能人が、家族のトラブルに見舞われ、酒や麻薬に溺れ、でもいままた再起に向けて動き出したというカムバック・ストーリーを番組後半によくもってくるが、あくまで前向きのストーリーとして描き、お涙頂戴のテイストにはしない。

 アメリカを代表する芸能ニュース番組は、Entertainment Tonight で、ホストの一人の Mary Hart は25年にわたってホストを務めている。番組ホームページはこちら:

 http://etonline.com/

New York Business.com

  Crain Communications, Inc. という出版社がある。 Advertising Age, Television Week などを刊行している。私はこの出版社に取材に出かけたことはないが、クレインという一族が同族経営しているようだ。

 Crain Communications, Inc. はCrain's New York Business という週刊誌も出している。ニューヨークに特化したビジネス雑誌で、緻密な取材に基づく信頼性の高い報道活動を展開している。

 この雑誌のウェブ版は New York Business.com という名称で、アドレスはこちら:

http://www.newyorkbusiness.com/apps/pbcs.dll/frontpage

 日本では知名度が低いと思うので、ご紹介してみた。 

The End of Raines

 4月2日に取り上げた NBC のドラマ Raines。

 結局、7エピソードの放送でもって放送終了ということになった。残念である。

 アメリカ国内では、NBCのホームページ上で全てのエピソードを見ることができるようだが、日本からのアクセスでは見ることができないようだ。

Las Vegas

 私は年3回NYに出かけ、1年のうち合計2ヶ月ほどNYで過ごしているが、その他の土地には数えるほどしかでかけたことがない。NYの動きはとにかく速いので、他の土地まで注意をはらう余裕は中々生まれてこない。

 だが、ラスベガスには1回だけでかけたことがあり、60 Minutes(CBS) でモーリー・セイファー記者がこの都市を取り上げるとすればこんなふうになるだろうと考えたことがある。

 まず、例によって真っ暗なスタジオで、セイファー記者がとつとつと語りだす。

「親愛なるわが出不精なニューヨーカーの皆様、世界一周の旅にでかけませんか。ニューヨークにいるのが一番だという声も聞こえてきそうですが、何も豪華客船で船旅へとお誘いしているのではないのです。飛行機でひとっとび、24時間世界一周の旅へとまいりましょう。」

 そして、ラスベガスに画面は切り替わり、セイファー記者はしらっとした表情でラスベガスを歩き始める。

「ようこそ、ラスベガス。にせもの万歳の都へ。ここでは世界の主要な観光地を一度に楽しむことができます。私の後ろに立っておりますのは、パリのエッフェル塔です。この街のエッフェル塔は、鉄は腐食しておりません。」

「こちらはベネチアの運河。どうです、入浴剤をまぶしたかのような美しい水の色が印象的です。」

「こちらは新品のエジプトのピラミッド。クレオパトラが生きていた頃の姿を取り戻すことができました。」

「そして、こちらはわれらがニューヨークのグランドセントラルターミナルです。中に入ってみましょう。おや、泉にコインが落ちていますね。それはそこにカジノがあるからです。」

 以下、現在のラスベガスのテーマホテルはカジノにばかり依存しているのではないこと、水不足が深刻な問題であることなどを伝えていく、という按配。

 ラスベガス・ファンの方、申し訳ない。

  ことによると、かつてこのような切り口の番組を私はどこかで見ているかもしれないが、調べた限りではそのような番組はなかったようなので公開してみた。

 もし、このような切り口の番組があったという場合はご一報をいただければ幸いである。

How to Watch TV (Part Ⅱ)

 雑誌の読みどころガイドをご紹介したので、テレビの見所ガイドについてもふれておきたい。

 日本語によるアメリカのテレビ批評については、既に4月30日の項で生盛健氏のサイトを紹介した:

http://timessquare.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/how_to_watch_tv.html

 生盛氏がいかにこの道の通とはいえ、個人サイトゆえカバーできる番組には限りがある。

 数多くの番組をカバーする、バランスのとれた既存メディアのテレビ批評としては、私は Daily News (NY) をもっともよく読んでいる。「ニューヨークタイムズ」や「ニューヨークポスト」はちょっと毒が強くバランスを欠きがちの傾向があり、「TVガイド」はその逆にあまり読みでがない。

 「デイリーニュース」のテレビ面はこちら:

http://www.nydailynews.com/entertainment/tv/index.html

 テレビのビジネス面については、「ニューヨークタイムズ」のビル・カーター記者の記事、テレビ業界紙Television Week, Broadcasting & Cable はとりあえず必読。 

  また、視聴率については私は Zap2it.com で見ている:

http://www.zap2it.com/tv/

On the Newsstand

 「ニューヨークポスト」のビジネス面は、毎週月曜日に、その週に発売になる主要な雑誌のできばえについて、星をつけた上で読みどころを紹介する On the Newsstand という記事を掲げる。

 同紙のウェブサイトがリニューアルしてから、この記事の掲載場所は不安定になり、見つけ出すのに一苦労するようになった。それでも、ニューヨークの雑誌がどんなテーマにいかなる関心を寄せているかをおさえる上で、この記事は有用。下記にサンプルとして5月7日付の記事のリンクをはっておく。

http://www.nypost.com/seven/05072007/business/all_the_city_mags_business_.htm?page=0

Henry Miller's Theater

 ブロードウェイの劇場が1つ増えることになると、「ニューヨークタイムズ」(5月10日付)が伝えている。

 ブロードウェイと43丁目の Henry Miller's Theater で、ラウンドアバウト・シアター・カンパニーが20年契約する模様。

 近年のブロードウェイはいつになく興行成績が良く、もう1つ劇場を増やしても十分観客を動員できると思われる。

Web 3.0

 New York Magazine の Spider-Man 3 の映画評のタイトルは、 Web 3.0。

 おやじギャグと言われればそれまでだが。

Slips

 ある革靴にハーフラバーソールをつけてもらうかと思案中。もともとよくすべる靴なのだが、特に先日、何度も転びそうになり、もう耐えられないと思った。

 ラバーソールは美しくないと言われるが、転ぶのを心配しながらそろりそろり歩くのは、靴として本末転倒だ。

 美学のためにはある程度のやせ我慢は仕方ないのは認める。でも、安心して歩けないようでは、スーパーで売っているようなゴム底靴の方がまだまっとうな靴だということになりかねない。

Candace Bushnell

 Sex and the City の原作者 Candace Bushnell の Lipstick Jungle がNBCでこの秋にテレビドラマになると、「ニューヨークタイムズ」(5月11日付)が伝えている。ブルック・シールズほかの出演。原作通りの設定なら、今回の主人公たちは40歳代になる。原作はアマゾンではこちらから:

http://www.amazon.co.jp/Lipstick-Jungle-Candace-Bushnell/dp/0786887079/ref=sr_1_6/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=english-books&qid=1179026802&sr=1-6

 ちなみに、いつだったか New York が、Sex and the City の Mr. Big のモデルとなった人物について記事を掲げたことがある。写真を見る限りでは全然かっこよくなかったのを覚えている。

Op-Ed

 5月10日に取り上げた Pop-Ed(http://timessquare.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/poped.html)だが、その中でふれた Op-Ed の意味が分からないというメールをいただいた。

 Op-Ed は Opposite-Editorials の意味で、社説の向かい側の論説面を意味する。

 このページは私の長年のこだわりのテーマで、「日経広告手帖」2006年10月号にも記事を執筆している。下記から EBook で記事を読めるので、ご関心のある方はどうぞ。

http://www.nikkei-ad.com/techo/top_2006.html

The Point of Passion

 Conde Nast Portfolio を引き続き熟読している。私はコンデナストの回し者ではないが、こくのある記事の数々にうなっているところである。

 さて、広告業界誌 Advertising Age の5月7日号には、コンデナストが中綴じでカラーも鮮やかな The Point of Passion という広告を出している。

  Mary-Louise Parker が劇場の舞台の片隅でThe New Yorker を、Richard Branson は宇宙船内で Wired  を読み、Stanley Tucci はGourmet を抱きしめているという、自社の雑誌の魅力を訴える広告である。12回シリーズの第1回目のようだ。

 メディアのブランド力の源は何かについて教えてくれるエレガントな広告である。

The Premier Issue Of Conde Nast Portfolio

★2008年5月9日追記

 「日経ビジネス」オンライン版に、Portfolio編集部を訪問した成果に基づく記事を発表した:

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080502/155049/

 The Premier Issue of Conde Nast Portfolio をようやく手にすることができた。全328ページと堂々たるページ数で、記事も広告も充実している。トム・ウルフが、マイケル・ルイスが記事を執筆している。広告を掲載しきれず、第2号の掲載にしてもらった広告主もいるという話は本当だろう。

 既に4月19日の項でも言及したように、同誌の基本的な性格は Vanity Fair のビジネス版である。この雑誌は、経済を文化的な活動としてエレガントな散文で描こうとしている。従来のビジネス雑誌にあったおやじくささと油ぎとぎとな感触は払拭されている。儲けのネタを探すためよりも、ビジネスの世界をより深い視点から愉しむための雑誌といえる。

  同誌はイン・デプスな記事を提供するために、ニュースのサイクル速くなっている現状であえて月刊誌というサイクルを選択し、ウェブ上でも毎日情報を発信する。この創刊号のあとは、9月号から毎月刊行の予定。

 「最後の大型ビジネス雑誌」ともこの雑誌は言われているが、これだけの予算と時間をかけて雑誌を創刊するのは非常に贅沢なことである。

 コンデナストならではの洗練されたスタイルの Portfolio。是非 成功してほしいと願わずにはいられない。

New York Magazine

 アダム・モス編集長のもとで活気を取り戻したNew York Magazine

 同誌のホームページ(http://nymag.com/)には掲載されていないようだが、横軸に Brilliant と Despicable、縦軸に Highbrow と Lowbrow をとったカルチャー・マトリックスは、ニューヨークのセンスを身につけるのに好適。

 例えば、4月30日号の Highbrow と Despicable には「フォックスの視聴者は The Daily Show の視聴者よりもニュースについてよく知らないという研究結果が公表された」という項目があるといった具合。

 このマトリックスで知らない項目があるときは、私はもれなく調べることにしている。

Tyra Banks

 タイラ・バンクスは強烈なオーラを放つ人だ。彼女の番組を見ていると、この人はオプラ・ウィンフリーなみの影響力を将来持つかもしれないと思うことがある。

 モデルとしての成功に甘んじず、バンクスはプロデューサー兼ホストとしての成功を目指した。America's Next Top Model が成功を収め、自らの名を冠した The Tyra Banks Show というデイタイムのトークショーを持つに至った。番組ホームページはこちら:http://tyrashow.warnerbros.com/

 視聴率でも番組の安定性という点でも Live with Regis and Kelly のレベルに追いつくにはまだまだ時間がかかるが、この番組は勢いがあり若い女性の関心のあるテーマをかなりどぎつく掘り下げ、なかなかの人気である。

 アメリカのメディアの彼女に対する評価を観察すると、その野心家ぶりが好きになれない人も少なくないようだ。

 私は別にそうしたことは気にならないので、どこまでこのショーが伸びていくか、ウォッチャーとして怠りなくチェックしていきたいと思う。 

Pop-Ed

 ニューヨークタイムズ社傘下の The Boston Globe のサイト boston.comが Op-Ed ではなく Pop-Ed という試みをスタートさせた。プレスリリースはこちら:

http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=105317&p=irol-newsArticle&ID=998055&highlight

 ジェイク・ブレナンというミュージシャンが、その日のニュースに基づいて毎日新しい曲を作り、下記のサイトでミュージック・ビデオとして公開するもの。

http://www.boston.com/pop-ed

★追記:Op-Edについて、5月15日の項で取り上げた。

http://timessquare.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/oped.html

   

Editors

 お仕事を頂戴するのはありがたいのだが、頼りになる編集者の方にめぐりあうことは非常に少ない。

 仕事をお引き受けするお返事を送った後に何の音沙汰もないとか、1ヶ月たっても連絡をよこさず、こちらからメールするときれいさっぱり忘れているとか、論外のケースも多い。

 自分の社の都合と執筆者の心意気の板ばさみになりつつも、両者にとって利益なるように舵取りしていくことができなければ、編集者とはいえない。

 この点で、学術出版社の編集者は怖い。学者の能力を非常に的確に評価できる方が多いし、この方たちに自分の能力のなさを隠しおおせることはできないので、よい仕事をしなければという気持ちにさせられる。

Valerie Plame

 今年3月、バレリー・プレイムはアメリカ議会の公聴会に現れた。

 プレイムはCIAのスパイだったが、コラムニストのロバート・ノバックにその秘密を暴露された。これにより、プレイムはスパイとして働くことができなくなった。また、彼女の夫ジョーゼフ・ウィルソンは、「ニューヨークタイムズ」のOp-Edページ、ブッシュ政権のイラク政策を批判する論説を発表している。

 こうした経緯があっての公聴会であったが、アメリカのメディアの中には彼女のアルマーニの衣装に目を奪われ、公聴会の内容よりアルマーニについて力を入れて報道したところもあった。新聞業界誌 Editor & Publisher の Greg Mitchell は、これを不謹慎だとするコラムを書いている。

 ミッチェルのコラムは正論だが、それほどにプレイムのアルマーニのジャケット姿が鮮やかだったということでもある。写真を掲載している適切なページが見つからず、リンクなしで不親切で申し訳ないが、今回はアルマーニはその実力を改めて見せ付ける格好になった。

 なお、プレイムは回顧録を出版し、映画化もされる予定である。かなりの話題になるのではないか。

Tina Fey

 みのわあつお著『サタデー・ナイト・ライブとアメリカン・コメディ』(フィルムアート社)は、Saturday Night Live (SNL) の魅力を存分に語った書物である。

 みのわ氏はティナ・フェイ否定派だ。122ページで「番組から笑いの爆発力と破壊力と刺激がまったくなくなり、スノッブ向けの知的なユーモアのスケッチとトークばかりになってしまった」と書かれている。フェイがヘッドライターの時代の SNL はこれまでの SNL とは異質であり、視聴者の好き嫌いは分かれた。男性視聴者が減り、女性視聴者が増えた。

 現在、フェイは SNL からは降板し、30 Rock というコメディを執筆し出演もしている。今のところはそこそこの出来で、これからもっと成功するかもしれない。

 フェイはNBC内部でかわいがられているようで、年々傲慢なキャラになってきているように見受けられる。ケイティ・カーリックが Today を降板したときに、マット・ラウアーへのメッセージとして「今度はあんたがしっかりするのよ」とビデオクリップで述べていたが、かなり強い言い方でジョークというよりラウアーを馬鹿にしているように私には見受けられた。

 フェイは、自分のことも笑いものにするのを心がけるべきではないかと思われる。そうしないと、彼女はただ単に嫌みな人になってしまう恐れがある。 

Conan O'Brien

 コナン・オブライエンは、既に2009年に Tonight を引き継ぐことが決まっている。彼がカリフォルニアに移ることになるのか、あるいはNYに留まり、Late Night のほうをカリフォルニアからの放送にするのかは、多分まだ決まっていないと思われる。Late Night のホスト選びも難しく、もしカーソン・デイリー昇格するとしたら うーむ というところだ。

 それはさておき、コナン・オブライエンで Tonight は人気を維持できるのだろうか。私はコナン・オブライエンもクレイグ・ファーガソンもどちらもあまり面白いと思わない。

 レターマンが引退したらジョン・スチュワートが Late Show の後を継ぐという観測もあるが、もしそうなったらこれはさぞや面白い番組になるだろうと思う。

 でもその前に、レターマンには週2日ゲストホストにしてもいいから、あと7,8年は番組を続けてほしい。

 コナン・オブラエインには思い入れがないので、この項はどうも話がうまくまとまらない。

American Idol

  シーズンを重ねるにつれパワーを増していく American Idol。

   日本でもケーブルテレビで見ることができるが話題になってはいないようで、授業で聞いても知らない学生がほとんどである。それだけ、日本とアメリカのミュージック・シーンの距離は大きくなっているのかもしれない。ごひいきのアイドル志願者を応援し始めるとはまることうけあいなのだが、残念である。

 最近、60 Minutes がジャッジの一人 Simon Cowell にインタビューしていた。彼は本業はソニーBMGのA&Rで、その視点からこの番組に関わっている。

 また、番組ホストの Ryan Seacrest は既に大御所といってもよいほどの人気だが、この調子でいったら彼は10年後、20年後には押しも押されもしないアメリカを代表する司会者になるのではないかと思われる。彼の爽快な声は聞いていてとても気持ちがいい。

 ただ、Paula Abdul の甘ったるいコメントは、サイモンの毒消しとして必要なのは分かるが、ちょっと勘弁してほしいと私は感じるようになってきている。

Clive Davis and Paul Shaffer

 こんなことを日本語で書いて面白いと思って下さる方がどれほどいらっしゃるのかはなはだ心もとないが、クライブ・デイビスとポール・シェイファーはよく似ていると思う。

Yasushi Abe

 安倍寧氏の「中日新聞」連載コラムが、『喝采がきこえてくる-ブロードウェイから東京まで、ショウ・ビジネスの光と影』(KKベストセラーズ)として本にまとめられた。ブロードウェイと音楽界について、最新の話題を幅広く取り上げている。アマゾンではこちらから:

http://www.amazon.co.jp/%E5%96%9D%E9%87%87%E3%81%8C%E3%81%8D%E3%81%93%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B-%E5%AE%89%E5%80%8D-%E5%AF%A7/dp/4584189935/ref=sr_1_2/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=books&qid=1178383375&sr=1-2

 安倍氏は、長年にわたってロードウェイ人とじっくり交流してきた数少ない日本人の一人であり、足で稼いだ情報が本書には随所にちりばめられている。失礼ながら「中日新聞」連載時は私は全く読んでいなかったので、本書を読んではじめて知ったことがいろいろあった。

 厳しい批評をたくみに織り交ぜながらもさわやかな読後感が残るのは、安倍氏のショー・ビズへの愛情のなせる業であろう。巻末付録の森光子さんとの対談は、その愛情の深さがとりわけ深くにじみ出ている。298ページの写真はお二人ともとても素晴らしいお顔で、この写真だけでもこの本は価値があると言えるほどだ。

 そして、安倍氏のオフィシャル・ウェブサイトはこちら。こちらで紹介されている洋食屋さん「フリッツ」は私もでかけ、あまりのおいしさに「タカシ」としてコメントを寄せている。

 http://blog.avexnet.or.jp/abe/

Johnny Carson

 うろ覚えなのだが、The Tonight Show Starring Johnny Carson について知ったのは「刑事コロンボ」だったと思う。

 執事がコロンボの質問に答えて、私たち夫婦は「トゥナイト」を見終わった後に見回りをして、と言っていたシーンがあったと記憶する。執事が「今日も楽しかった」とつぶやいて腰をあげる回想シーンもあったはずだ。そんなに面白い番組がアメリカにはあるのかと印象に残ったように思う。

 私がはじめてNYに出かけたのは1993年で、残念ながらジョニー・カーソンは引退した後だった。だから、テレビとラジオの博物館やビデオなどを通じて追体験しただけで、リアルタイムで「トゥナイト」を見ることはできなかった。コメディ・スケッチは今見ても面白いが、オープニングのモノローグはその日のニュースを見た後に番組を見ないと面白さが半減するもう少し前にNYにいければよかったと悔やまれる。

 どんなゲストからも魅力を引き出すことができ、レターマンをはじめとして多くのコメディアンの才能を見抜いたもの静かな紳士、ジョニー・カーソン。彼が亡くなった時に出版された写真集をふと眺めていて、また彼の番組のビデオが見たくなった。

 ジョニー・カーソンについて知ることのできる日本語の文献は少ない。高平哲郎氏の『スタンダップ・コメディの勉強』(晶文社)くらいしか私は知らない。この本にはデーブ・スペクター氏含蓄あるコメントも多数収められており、アメリカの笑いは日本人には理解されないと悲しげに語る一節もある。

AURA

★2011年9月10日追記

 リニューアルして「AURA」はつまらなくなった。広報誌らしくないのが「AURA」の面白さだったのに、それが薄れた。記事も読み応えがなくなってしまった。

 マンネリを防ぐために定期的なリニューアルは有効だが、今回は失敗である。極めて残念だ。

★本文

 フジテレビの広報誌「AURA」。

 くまなくチェックしているわけではないが、私の知る限りでは、日本のメディア企業の出している広報誌で一番面白いのは「AURA」だと思う。本音で勝負の面白さがこの雑誌にはある。

 例えば、181号の特集は「番組制作会社とテレビ局・再考」で、あるある問題を受け、様々な角度からつっこんだ議論を展開している。

 また、横澤彪氏の連載は、テレビの害悪について容赦なく議論を展開する。現在の横澤氏は自由にものが言える立場だとはいえ、広報誌でここまではっきり自社の商売の問題点を指摘する記事は珍しい。

 大山勝美氏の力作『私説放送史「巨大メディア」の礎を築いた人と熱情』(講談社)も、この雑誌の連載が単行本化されたものである。

 そして、村中智津子氏の「メディアウォッチャー  IN ニューヨーク」は長期にわたって続いている連載だが、アメリカのテレビビジネスについて日本語で書かれた記事では、最も質の高い分析の一つである。

 この自由闊達さはフジテレビの強みだと思う。これだけのさばけた雑誌を長年にわたって続けられるのは、こうした雑誌を面白がれる組織文化がフジテレビにあればこそである。

 ただ、一般の書店では売っていないし、ネット上で本文を公開してもいないのが残念である。もっと広く読まれる価値のある雑誌である。

The New York Sun

 ニューヨークには The New York Sun という新聞もある。 2002年に創刊された新しい新聞で、週5回発行で1部50セント。ホームページはこちら: http://www.nysun.com

 拙稿を掲載して下さる雑誌がないので、一度原稿を書いてみたいと思いつつ取材できずにいる新聞である。

 同紙のメディアキットを見ると部数は11万4000部ほどだが、そんなに部数が出ているという実感は私はない。NY1のIn The Papersでは時々この新聞を取り上げるが、この新聞の存在自体を知らないニューヨーカーも多いと思われる。

 私はNYにいるときはこの新聞よく手にする。というのは、私がよく泊まるホテルがこの新聞を無料で配布しているからだ。

 読んでみると、一般ニュースの量が少ないのはものたりないが、保守派の論説ページは「ウォールストリートジャーナル」とはまた違った面白さがあり、アート批評は質量ともに中々のレベルである。もうかっているようには思えないのだが、意外とハイブラウな新聞で私には気になる存在である。

 ブログのためという理由で取材に応じてもらうのはまだ難しいので、この新聞について私に記事を書かせて下さる媒体があれば、ご連絡をお願い申し上げたい。

The Public Editor

 3代目の指名はないかもしれないという観測もあった、「ニューヨークタイムズ」のパブリック・エディターだが、Editor & Publisher のオンライン版によると、人選は完了した模様である。

 NYTは長年オンブズマンには反対の立場をとってきた。それが、ジェイソン・ブレア事件がきっかけとなり、パブリック・エディターの名前でオンブズマンを設けた。

 初代も2代目も優れた仕事をしてきたと私は評価するが、ビル・ケラー編集主幹などはパブリック・エディターの批判にたえかねるところもあったようだ。

 オンブズマンは目の上のたんこぶ的存在だが、だからこそ新聞を改善するために有意義である。NYTに限らず、オンブズマンは広く活用されるべきであろう。

The Cult of the Amateur

 The Cult of the Amateur というアンチWeb2.0の本が刊行される。議論はだいたい予想がつくが、一応読んでみるつもり。

http://www.amazon.co.jp/Cult-Amateur-Internet-Killing-Culture/dp/0385520808/ref=sr_1_2/249-3142245-6379561?ie=UTF8&s=english-books&qid=1178122201&sr=1-2

PBS

 既に The NewsHour with Jim LehterCharlie RoseNews War について記したが、私はPBSの番組をよく見る。

 数百チャンネルあるアメリカのテレビ界にあって、知性に訴えるPBSは異彩を放っている。私の研究仲間ですら、PBSは頭が痛くなるから見ないという人がいるほどだ。商業放送ではできない番組のみを放送するPBSは、公共放送の使命を十二分に果たしている。

 PBSは一般の視聴者からの寄付を募るために、Pledge Week という期間をよく設ける。番組の途中で、今ご覧になっているような番組を今後も放送してほしいとお考えなら寄付をお願いしますと訴える。PBSを支持する知識人やエンターテイナーが入れ替わり立ち替わり登場してPBSの素晴らしさを語り、こちらにお電話をと促す。寄付金の額に応じて、バッグや番組DVDなどがもらえる仕組みになっている。

この3月には、「ニューズアワー」を引退したロバート・マクニールがPBSへの支持を訴えていた。彼は、チャンネルが増えれば増えるほどPBSのユニークさは際立ってきていると述べていた。私もそう思う。

メディア監視団体FAIRは「ニューズアワー」を保守的だとして非難するが、私は「ニューズアワー」は政治的にはまず中立とみなしてよいと思う。だが、Frontlineなどはかなりリベラルな政治的立場に立った番組と言ってよいだろう。このため、共和党の中にはPBSを敵視する人が少なくない。

財政的にもPBSは非常に厳しい状態にあるが、PBSはアメリカの良心の一つであり、今後も良質な番組を作り続けてほしいと思う。

Chicago

 昨年、リバイバル版の公演が10周年を迎えたブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」。

 1975年の初演のときは2年ほどで公演を終了している。オリジナル・キャストは、チタ・リベラ、グウェン・バードン、ジェリー・オーバックとそうそうたる顔ぶれであった。

 「シカゴ」も「コーラス・ライン」も初演の開始は1975年である。「コーラス・ライン」のかげに隠れて「シカゴ」にはあまり注目が集まらなかったのかというと、必ずしもそうではないらしい。初演を見ることができた方にうかがうと、できの悪い作品ではなかったが、ものすごい作品だという印象ではなかったそうだ。

 だが、ブロードウェイで上演をするということは、新聞・雑誌の批評がでそろい、年鑑の類に記録がなされ、みんなの記憶に残ることを意味する。

 その後、20年弱の月日が経過し、シティセンターでのアンコール・シリーズでこの作品が取り上げられたのをきっかけに、「シカゴ」はとんとん拍子に人気舞台にのし上がっていった。

 初演を見る機会に恵まれていないので思い違いしている可能性があるが、「シカゴ」は時代に先駆けすぎた作品だったのかもしれない。こう考えると、先に416日に取り上げた「サイドショー」も、あと10年、20年経過してリバイバルすると、観客に受け入れられることになるのかもしれない。

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